【完全試合とは】達成条件とノーノーとの違い・歴代記録を徹底解説
プロ野球の長い歴史の中でも、ごく限られた投手しか到達したことのない究極のピッチング記録が「完全試合(パーフェクトゲーム)」です。2022年4月に当時千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手がNPB史上28年ぶりとなる快挙を成し遂げて日本中を沸かせた記憶は、今なお色あせることなく野球ファンの間で語り継がれています。
一方で、「ノーヒットノーランとは何が違うのか」「もし味方がエラーしたらどうなるのか」「投手が途中で交代した場合は記録になるのか」といった細かなルールや条件については、正確に把握しきれていない方も少なくありません。この記事では、完全試合の定義から成立条件、日米の歴代達成者、そしてプロ野球における達成の超難関度までを分かりやすく解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:完全試合は「相手打者を1人も出塁させずに勝利する」記録であり、安打だけでなく四死球や失策による出塁も一切許されない。
- 要点2:ノーヒットノーランが無安打であれば四死球・失策での出塁が認められるのに対し、完全試合は打者27人(9回完了時)を完璧に抑え切る必要がある。
- 要点3:NPB史上で達成したのは佐々木朗希投手を含めわずか16人のみで、天文学的な難易度と守備陣の協力が不可欠な奇跡の記録である。
【基本ルール】完全試合とは?ノーヒットノーランとの決定的な違い

完全試合とは、野球において先発投手が相手チームの打者を1人も出塁させず、試合終了まで無失点で勝利投手となる記録を指します。公認野球規則上、9イニング制の試合であれば「相手打者27人を連続で完全にアウトにして勝利すること」が基本条件となります。
似た言葉としてよく比較されるのが「ノーヒットノーラン(無安打無得点試合)」です。この2つの決定的な違いは「走者(ランナー)を1人でも出したかどうか」という点にあります。
ノーヒットノーランは、相手にヒットを1本も打たれずに完封勝利すれば成立します。そのため、四球(フォアボール)や死球(デッドボール)、あるいは味方の守備エラーによって走者を出してしまっても、失点を防ぎ無安打のまま勝ち切れば記録として公認されます。
対して完全試合では、相手をノーヒットに抑えることはもちろん、四死球による出塁も、野手の失策による出塁も、打撃妨害や振り逃げによる出塁も一切許されません。投手の投球技術だけでなく、野手全員のノーミス守備、さらには審判のストライク・ボールの判定に至るまで、すべての要素が完璧に噛み合わなければ成し得ない記録なのです。
四球やエラーはどうなる?完全試合が成立する「厳格な達成条件」

完全試合の判定基準は極めてシビアです。どのようなケースで記録が消滅し、あるいは継続するのか、知っておくべき主要なルールを整理しました。
① 四球・死球(フォアボール・デッドボール)を出した場合
投手が四球や死球を与えた瞬間、打者が一塁へ進塁するため完全試合は即座に消滅します。ただし、その後に安打を許さず失点もしなければ、ノーヒットノーランの権利は残ります。
② 味方野手がエラー(失策)をした場合
投手が打ち取った打球であっても、野手がファンブルしたり悪送球したりして打者走者がセーフ(失策による出塁)になった場合、その時点で完全試合は消滅します。「投手に責任のないミス」であってもランナーが出た事実に変わりはないため、記録は認められません。なお、ファウルフライを野手が落球するような「アウトを取り損ねたが打者走者を出塁させていないエラー」の場合は、その後その打者をアウトに仕留めれば完全試合の権利は継続します。
③ 振り逃げや打撃妨害が発生した場合
第3ストライクの投球を捕手が捕球できず打者走者が一塁に生きた「振り逃げ」や、捕手のミットがバットに触れる「打撃妨害」などで出塁を許した場合も、完全試合は即座に途切れます。
④ 延長戦にもつれ込んだ場合
プロ野球の公式記録では、投手が9回まで打者27人を完璧に抑えていても、味方打線が無得点で試合が0-0のまま延長戦に入った場合、延長戦も含めて試合終了まで走者を一切出さずに勝利しなければ完全試合とは認定されません。仮に10回表に先頭打者にヒットを打たれた場合、9イニングを完全投球していても公式な完全試合の記録には残りません。
なぜプロ野球でも滅多に出ないのか?達成難易度が極限とされる理由

日本プロ野球(NPB)の長い歴史において、完全試合はわずか16回しか記録されていません。ノーヒットノーランが通算100回近く達成されていることと比較しても、その達成難易度の高さが際立っています。
これほどまでに完全試合が出ない最大の要因は、「投手の実力」だけでは絶対にコントロールできない要素が多すぎる点にあります。好投手であれば三振を多く奪うことは可能ですが、27のアウトすべてを三振で奪うことは現実的ではありません。多くのアウトは打球を野手が処理する「打たせて取る」形になります。
ボテボテの内野安打になりそうな打球、イレギュラーバウンド、強烈なライナー、フェンス際への大飛球など、一歩間違えればヒットや失策になり得る場面を、守備陣が9イニングを通じてノーミスで支え続けなければなりません。
さらに、終盤の7回や8回を過ぎると球場全体が異様な緊張感に包まれます。「大記録を阻止したい」と粘る相手打線のプレッシャー、絶対にエラーが許されない野手陣のプレッシャー、そしてスタミナが限界に近づく中で1球の失投も許されない投手の精神的重圧が重なり、多くの投手が偉業目前で1本のヒットや1つの四球に泣いてきました。
【NPB歴代達成者一覧】槙原寛己から佐々木朗希まで球史に刻まれた偉業
NPBにおける完全試合の達成者は、1950年の藤本英雄氏(巨人)から2022年の佐々木朗希投手(ロッテ)まで合計16人です。
歴史的なハイライトとして外せないのが、1994年5月18日に福岡ドームで行われた広島戦で読売ジャイアンツの槙原寛己投手が達成した記録です。槙原投手の達成以降、プロ野球では打撃技術の向上や球数管理の導入もあり、四半世紀以上にわたって達成者が現れず、「槙原の記録が平成唯一の完全試合」として長く語り継がれました。
その分厚い歴史の壁を28年ぶりに打ち破ったのが、2022年4月10日のオリックス戦に先発した佐々木朗希投手でした。佐々木投手はこの試合で以下の歴史的な記録を樹立しました。
- NPB史上最年少記録:20歳5ヶ月での完全試合達成
- 世界記録:13者連続奪三振(プロ野球新記録・世界記録)
- タイ記録:1試合19奪三振(NPB歴代最多タイ記録)
佐々木投手は160km/hを超える剛速球と鋭く落ちるフォークボールを武器に相手打線を圧倒し、走者を1人も出さないまま27人を完璧に封じ込めました。さらに驚異的だったのは、その翌週の登板(4月17日の日本ハム戦)でも8回まで1人の走者も出さないパーフェクトピッチングを継続したことです。球数制限と選手の将来を守る首脳陣の判断によって8回で降板したため「2試合連続完全試合」という前代未聞の記録は幻となりましたが、計17イニング連続完全投球という圧倒的なパフォーマンスは世界中の野球界に衝撃を与えました。
「継投による完全試合」は認められる?幻の日本シリーズ山井・岩瀬リレーの真相
1人の投手が完投するのではなく、複数の投手がバトンをつないで相手打線をパーフェクトに抑え込んだ場合、それは完全試合として認定されるのでしょうか。
日本プロ野球の公式ルール上、複数の投手が継投して走者を1人も出さずに勝利した場合、それはチームとしての「完全試合(参考記録)」という扱いになり、個人の完全試合記録としては認められません。
このルールを巡って球史に残る大論争となったのが、2007年の日本シリーズ第5戦(中日ドラゴンズ対北海道日本ハムファイターズ)です。中日の先発・山井大介投手が8回まで日ハム打線を相手に1人のランナーも許さない完全投球を披露。中日が1点リードのまま迎えた9回表、落合博満監督は非情とも言える決断を下し、守護神の岩瀬仁紀投手をマウンドに送りました。
岩瀬投手は見事に3者凡退で締めくくり、中日は「継投による完全試合」で53年ぶりとなる日本一を達成しました。しかし、前人未到の「日本シリーズでの個人完全試合」を目前にしながら降板となった山井投手の交代劇は、勝利を最優先した名采配か、個人の大記録を阻んだ采配かとして、球界を巻き込む大激論に発展しました。
メジャーリーグ(MLB)の完全試合達成者と日米記録の最新動向
世界最高峰の舞台であるメジャーリーグ(MLB)でも、完全試合は極めて希少な記録です。140年を超えるメジャーの歴史の中で達成者は通算24人しか存在しません。
MLBでの代表的な記録としては、1956年のワールドシリーズ第5戦でドン・ラーセン投手(ニューヨーク・ヤンキース)が達成した、ポストシーズン史上唯一の完全試合が有名です。
近年では投手の分業化が進み、先発投手が100球前後で降板するケースが増えたため、MLBでも2012年のフェリックス・ヘルナンデス投手(シアトル・マリナーズ)以降、10年以上も達成者が出ない期間が続きました。しかし、2023年6月28日にニューヨーク・ヤンキースのドミンゴ・ヘルマン投手がオークランド・アスレチックス戦で史上24人目となる完全試合を達成し、現代野球においてもパーフェクトゲームが可能であることを証明しました。
【完全試合とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:完全試合を達成した試合で、投手の球数制限やイニング数に決まりはありますか?
A1:イニング数は9イニング以上を投げ切る必要がありますが、投球数に関するルール上の制限はありません。少ない球数で効率よく打ち取るケースもあれば、佐々木朗希投手のように三振を量産して100球を超えるケースもあります。
Q2:味方打線が点を取れず、0対0のまま延長戦に入って降板したらどうなりますか?
A2:9回までパーフェクトに抑えていても、試合に勝利できなければ完全試合とは公認されません。過去にはメジャーリーグで9回まで走者を1人も出さずに抑えながら、延長10回に失点して敗戦投手となった悲劇の例(ハービー・ハディックス投手など)も存在します。
Q3:完全試合とノーヒットノーランはどちらが難しいですか?
A3:圧倒的に完全試合のほうが難易度が高いです。ノーヒットノーランは四球やエラーで走者を出しても達成できますが、完全試合は四死球・失策・振り逃げを含む「あらゆる出塁」が1度でも発生した瞬間に権利が消滅するためです。
まとめ:投手の究極の到達点「パーフェクトゲーム」が魅了し続ける理由
完全試合とは、単に「ヒットを打たれないこと」にとどまらず、四球を出さない針の穴を通すような制球力、味方守備陣の堅実なファインプレー、そして極限のプレッシャーに打ち勝つ強靭な精神力が揃って初めて成し遂げられる奇跡の結晶です。
データ分析や球数管理が徹底される現代野球において、先発投手が完投すること自体のハードルが上がっているからこそ、パーフェクトゲームの価値は年々高まっています。次にこの歴史的偉業を達成する投手がいつ現れるのか、プロ野球やメジャーリーグのグラウンドから今後も目が離せません。 (出典: 完全 試合 と は(Yahoo!ニュース))