枕草子『宮に初めて参りたるころ』現代語訳!定子との初対面とテスト対策
高校古文の教科書で必ずと言っていいほど掲載される、随筆『枕草子』の屈指の名場面「宮に初めて参りたるころ」。知性にあふれ、物事をズバズバと批評するイメージの強い清少納言ですが、この章段で描かれるのは、宮仕えを始めたばかりで緊張のあまり縮こまり、涙ぐむほど恥ずかしがる意外な「初心(うぶ)な姿」です。
この記事では、高校の定期テスト対策や大学入試、そして古典の教養を深めたい方に向けて、「宮に初めて参りたるころ」の全文現代語訳とあらすじを徹底解説します。中宮定子との初対面で見せた清少納言のリアルな心情の揺れ動きから、テストに直結する重要古語・助動詞の品詞分解、敬語の主体と客体(誰から誰へ)まで、分かりやすく解き明かしていきます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:宮仕え初日の清少納言は極度の緊張で恥ずかしさに圧倒され、普段の知性派キャラとは真逆の「引っ込み思案な新社会人」状態だった。
- 要点2:主君・中宮定子の圧倒的な美しさと細やかな気配り(絵双紙を見せる場面)によって、定子への深い崇拝と愛情が芽生える決定的な瞬間を描いている。
- 要点3:定期テストでは「恥づかし」「まばゆし」などの重要心情語、絵双紙の意味、最高敬語の識別(誰から誰への敬意か)が頻出する。
【あらすじと背景】才女・清少納言の宮仕えデビューと主な登場人物

『枕草子』の作者・清少納言が、一条天皇の皇后である中宮定子(ちゅうぐうていし)のもとへ初めて出仕したのは、正暦4(993)年の冬、清少納言が27歳前後の頃とされています。当代随一の知識人として名高い彼女でしたが、華麗な宮廷の空気に最初は完全に気圧されていました。
まずは物語の人間関係と大まかな流れを整理しておきましょう。
【主な登場人物】
- 清少納言(作者):主人公。緊張と気後れから顔を上げることもできず、夜だけ定子の前に出仕するものの、恥ずかしさでパニックになる。
- 中宮定子:一条天皇の正妻。当時17歳前後の若さでありながら、神々しいほどの美貌と教養、さらに新入りの清少納言を優しく気遣う器量を兼ね備えた憧れの主君。
- 先輩女房たち:定子に仕えるベテランの女性たち。貴族たちとも堂々と対等に渡り合っており、清少納言から見ればまぶしすぎる存在。
- 源経房(みなもとのつねふさ):中宮の御所を訪れた貴公子。定子サロンの華やかさを象徴する場面に登場する。
物語は、昼間の出仕に耐えられず「夜だけなら」と定子の前に伺候した清少納言が、定子のあまりの美しさに打ちのめされ、絵双紙(絵本)を差し出されて緊張をほぐしてもらうという、人間味あふれるエピソードを中心に展開します。
【本文と現代語訳】「宮に初めて参りたるころ」原文との対訳で一気読み

教科書で学習する定番の本文を、段落ごとの原文と分かりやすい現代語訳で対比させながら見ていきましょう。
【原文 第1段:出仕の気後れと夜の参上】
宮に初めて参りたるころ、もののはづかしきことの数知らぬに、涙も落ちぬべければ、夜々参りて、三尺の御几帳のうしろに候ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふ。ことばなども、さらにえ聞こえささず。
【現代語訳】
中宮(定子)様の御所に初めて出仕したころ、何もかもが恥ずかしくてたまらず、今にも涙がこぼれ落ちそうなので、夜ごとに伺候して、三尺の御几帳の後ろにお控えしていると、中宮様は絵双紙などを取り出して見せてくださる。しかし私は、お返事の言葉などもまったく申し上げることができない。
【原文 第2段:中宮定子の圧倒的な美しさ】
「いと恥づかしげなる御ありさまの、まばゆきまで見えたてまつるを、昼はいかで見え参らすべからむ」と、思ひ知る。暮れゆけば、御燈参りて、油の火あやしう光あひて、ただ今のやうに白うはあらねど、昼よりは心やすし。女房の、青色・紅・萌黄などの唐衣、袿、数知らず着たるが、立ちゐさばめく音どもの、いとすさまじきまで聞こゆるに、心もとなく、胸つぶるる心地ぞする。
【現代語訳】
「たいそう立派でこちらが気後れしてしまうほどの中宮様のご様子が、まぶしいほど美しくお見受けされるのに、昼間はどうしてお姿をお見上げ申し上げることができようか、いや、とてもできない」と痛感する。日が暮れると灯火が灯され、油の火がほのかに光り合い、今(昼間)のように明るくはないけれど、昼よりは気が楽である。先輩女房たちが、青色・紅色・萌黄色などの唐衣や袿を何枚も重ね着して立ち居振る舞い、衣擦れの音がすさまじいほどに聞こえてくるので、私は落ち着かず、胸がドキドキと高鳴る心地がする。
【原文 第3段:絵双紙を見せられる場面と退出】
「これ、見よ」とて、御手づから絵などを広げて見せさせ給ふに、「これはいかが」など、問はせ給ふ。御髪の、こぼれてかかりたるなど、めでたく、らうたげなり。「いかにして、かやうならむ人を、つゆ見慣れぬものから、めでたしと見たてまつるらむ」と、あやしう思さる。夜いたう更けて、「まかでよ」と仰せらるれば、下りぬ。
【現代語訳】
中宮様は「これをごらんなさい」とおっしゃって、自らの御手で絵などを広げてお見せくださり、「これはどう思いますか」などとお尋ねになる。(そのとき前に垂れた)中宮様の御髪がこぼれ落ちてかかっている様子などが、すばらしく、かわいらしい。「どうして自分のような者が、これっぽっちも見慣れていない素晴らしい方を、こうして間近に拝見しているのだろう」と、不思議なほどありがたく思われる。夜がたいそう更けて、「(自分の部屋へ)下がりなさい」とおっしゃるので、宿下がりの部屋へ退出した。
【心情の推移】強気な才女がなぜ「消えてしまいたい」と赤面したのか?

清少納言といえば、男性貴族を手玉に取る機知(エスプリ)や鋭い観察眼を持つ女性というイメージが定着しています。しかし、この章段の魅力は、「完璧な才女にも、何もできなかった新入社員時代があった」という赤裸々な自己開示にあります。
彼女の心情は、場面ごとに以下のように大きく揺れ動いています。
1. 初出仕の恐怖と圧倒的な劣等感
宮中の洗練されたルールや、先輩女房たちの堂々とした振る舞いに圧倒され、「涙も落ちぬべければ(涙がポロポロこぼれ落ちそう)」とまで追い詰められます。自意識の高さゆえに、失敗を恐れて几帳の陰に隠れることしかできません。
2. 主君・定子の神々しさに打たれる衝撃
間近で見る定子の姿は、清少納言の想像を遥かに超えていました。ここで使われる「まばゆきまで(眩しいほどに美しい)」という表現は、単なる視覚的な明るさだけでなく、身分の高さと気品に気圧される感覚を表しています。
3. 定子の優しさに触れた「絶対的な崇拝」の始まり
声も出せない清少納言に対し、定子は自らの手で「絵双紙(絵入りの物語本)」を広げて見せ、話題を振って緊張をほぐそうとします。この細やかな思いやりと、ふとした瞬間に見せた定子のあどけない美しさ(「らうたげなり」)に心を奪われ、清少納言の心は単なる「恥ずかしさ」から「生涯を捧げたい絶対的な推しへの憧れ」へと昇華していったのです。
【重要古語・文法解説】絵双紙の意味や助動詞・敬語の方向を徹底整理
定期テストや大学入試の古文読解において、この章段は文法・重要古語の宝庫です。特に失点しやすいポイントをまとめました。
■ テスト頻出の重要古語
- はづかし(恥づかしげなり):「恥ずかしい」だけでなく、「(相手が立派すぎて)こちらが気後れする、気が引ける」という意味。定子の立派さを形容している点に注意。
- まばゆし:「(光が)まぶしい」転じて「(相手の美しさや身分が際立っていて)まともに見られない、恥ずかしい」の意味。
- 絵双紙(えぞうし):絵を中心とした冊子・物語絵本のこと。言葉が出ない清少納言のために、定子が会話のきっかけとして取り出した小道具。
- らうたげなり:「かわいらしい、いじらしい」。年若い定子の愛らしさを讃える重要語。
- つゆ(〜打消):下に「ず」「ぬ」などを伴い、「少しも〜ない、まったく〜ない」。
■ 敬語の方向(誰から誰への敬意か)
古典のテストで最も差がつくのが敬語の識別です。
- 「見せさせ給ふ」:最高敬語(使役「させ」+尊敬「給ふ」)。【作者・清少納言 ⇒ 中宮定子】への敬意。「お見せになる」。
- 「え聞こえささず」:謙譲語「聞こえさす(申す)」。【作者・清少納言 ⇒ 中宮定子】への敬意。「(お返事を)申し上げることができない」。
- 「見えたてまつる」:謙譲語「たてまつる」。【作者・清少納言 ⇒ 中宮定子】への敬意。「お見上げ申し上げる」。
【品詞分解付き】定期テストに直結する重要フレーズの精読
試験でそのまま問われやすい2つの最重要文を品詞分解しました。活用の種類と文法的な意味を正確に押さえておきましょう。
【フレーズ①】「涙も落ちぬべければ」
- 涙:名詞
- も:係助詞
- 落ち:タ行上二段活用動詞「落つ」の連用形
- ぬ:強意(確述)の助動詞「ぬ」の終止形
- べけれ:推量の助動詞「べし」の已然形(「〜しそうなので」)
- ば:接続助詞(順接確定条件=原因・理由)
- 文法ポイント:「ぬべし」の形は「きっと〜してしまうにちがいない」「今にも〜しそうだ」という強意+推量。テストで現代語訳が頻出します。
【フレーズ②】「昼はいかで見え参らすべからむ」
- 昼:名詞
- は:係助詞
- いかで:副詞(反語の意を作る「どうして〜か、いや〜ない」)
- 見え:ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」の未然形
- 参らす:謙譲の補助動詞「参らす」の終止形
- べから:可能・推量の助動詞「べし」の未然形
- む:推量・反語の助動詞「む」の連体形
- 文法ポイント:「いかで〜(連体形)」の反語表現。「昼間はどうしてお姿をお見上げ申し上げることができようか(いや、恥ずかしくてとてもできない)」と訳します。
【高校古文対策】定期テスト頻出の予想問題と記述の解答テクニック
定期テストで高得点を狙うための予想問題と、減点されない記述解答のポイントを3つ紹介します。
【予想問題1】
傍線部「絵など取り出でて見せさせ給ふ」とあるが、中宮定子はなぜこのような行動をとったのか。その理由を簡潔に説明せよ。
【模範解答】
初めての宮仕えで緊張し、几帳の陰から出てこられない清少納言の警戒心や恥ずかしさを和らげ、会話のきっかけを作るため。
【予想問題2】
傍線部「まばゆきまで見えたてまつる」の「まばゆき」とは、具体的にどのような様子を指しているか。
【模範解答】
中宮定子の気品と美しさが神々しいほどに際立っており、直視するのがためらわれるほどまぶしい様子。
【予想問題3】
本文全体を通して描かれる、清少納言の中宮定子に対する心情の変化として最も適切なものを説明せよ。
【模範解答】
初めは宮中の空気に圧倒されて強い気後れと恥ずかしさを感じていたが、定子の細やかな心遣いと愛らしい美しさに間近で触れたことで、深い敬愛と憧れの念を抱くようになった。
【宮に初めて参りたるころ 現代語訳】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:なぜ清少納言は「昼」ではなく「夜」ばかり参上したのですか?
A1:昼間の明るい光の下では、自分の容姿や挙動不審な態度が先輩女房や中宮定子に丸見えになってしまうのが耐えられないほど恥ずかしかったからです。薄暗い灯火の夜であれば、几帳の陰に隠れて気配を消しやすいため、夜を選んで出仕していました。
Q2:定子が自ら「絵双紙」を広げて見せたことにはどんな意味がありますか?
A2:当時の身分制社会において、高貴な主君が新入りの召し使いに対して自ら手を動かして本を見せるのは異例の配慮です。定子の気取らない優しさと、緊張で固まる清少納言をリラックスさせようとする高いコミュニケーション能力を示しています。
Q3:テストで「誰から誰への敬意か」を素早く見分けるコツは?
A3:まずは動作の主語と目的語を特定しましょう。この章段では基本的に「定子の動作」には最高敬語(させ給ふ)が使われ、「清少納言が定子に対して行う動作」には謙譲語(参らす、聞こえさす)が使われています。「誰が高貴な人(定子)か」を常に意識するのが近道です。
まとめ:1000年経っても共感できる「新社会人のリアルな人間ドラマ」
『枕草子』の「宮に初めて参りたるころ」は、単なる古典の文法教材にとどまらず、新しい環境に飛び込んだ人間が抱く不安や憧れを生々しく描いた珠玉のエッセイです。
どれほど歴史に名を残す才女であっても、最初は誰もが自信を失い、失敗を恐れて縮こまるもの。そんな清少納言の背中を優しく押し、才能を開花させるきっかけを作った中宮定子との出会いのドラマを頭に入れておくことで、古文の読解力と記述力は劇的に向上します。テスト対策の際は、品詞分解や敬語の方向とともに、登場人物たちの生き生きとした心の機微をぜひ味わってみてください。 (出典: 宮 に 初めて 参り たる ころ 現代 語 訳(Yahoo!ニュース))